ミシシッピ州ガルフ・コースト(メキシコ湾)の航空宇宙産業集積地
2011.04.19
今では日産自動車やトヨタ自動車による新規組立工場が進出したことでミシシッピ州を知るようになった日本の経営者の方達は大勢いらっしゃいます。しかし、世界の主要旅客機に、ミシシッピ州で設計・製造された油圧装置が少なくとも1セットは搭載されていることをご存知の方はまだ多くはいないでしょう。これは、ミシシッピ州の航空宇宙・防衛産業における長い成功の歴史のほんの一部に過ぎません。今回は、50年前のアポロ計画の当時から米国における航空宇宙産業とともに育ち、主役を担ってきたミシシッピ州のガルフ・コースト(メキシコ湾沿い地域)をご紹介致します。(図を参考しながらご覧ください)
@ ミシュー地区
米NASAが所有するミシュー組立工場は、ミシシッピ州境近隣にある3.4 km2の敷地です。環境に制御される43エーカー(174,000 m2)の建屋の下で、おおよそ3,700名を雇用しています。1973年よりスペースシャトルの外部燃料タンクをその主要契約会社であるロッキードマーティン社が建造しています。ミシュー地区は、コンステレーション計画のオリオン宇宙船、アレース1アッパーステージとアレース5コアステージといった部品を製造する候補になっています。
A ステニス宇宙センター
ジョンC.ステニス宇宙センターは、NASAの最大のロケットエンジン総合試験施設としてミシシッピ州の南西に位置し、テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターとフロリダ州ケープカナヴェラルにあるJFケネディ宇宙センターの中間にあります。55 km2規模の複合施設は、506 km2の聴覚緩衝地帯に囲まれています。巨大な燃焼試験台は、サターンVロケットの第一、第二試射に当初使用されました。アポロ計画終盤より全スペースシャトルのメインエンジンは、ステニスにて飛行証明されていました。
1990年代には新しいテスト複合施設が建設され、ここで行われる一連のテストによりハイブリッド型ロケットモーターの商業化につながりました。2007年には英国の騒音公害問題によりロールスロイス社が航空機エンジンテスト施設をステニスに移転してきました。現在は、遠隔探査と地理空間技術に携わる30を越える政府機関や民間企業の本拠地となっています。
B ガルフポート・C ビロクシ地区
メキシコ湾に直接出ることができるガルフポート(Gulfport)とビロクシ(Biloxi)という大きな2都市があるだけに、造船と海洋科学は長い歴史を待ち、得意な分野として広く知られています。最近になって、プラスチック・ポリマー分野での技術や材料が向上するとともに、海洋と航空産業向けの高機能複合材に強い専門クラスターとしてこの地域は開発されてきました。ビロクシには、キースラ空軍基地もあり、第二空軍と第81空軍部隊トレーニングコマンドの総司令部になっています。第81空軍部隊は、空軍人材の技術トレーニングを常に平均して4,700名に対して行っています。このトレーニングは、広帯域メンテナンス、地上無線、情報テクノロジー、航空電子工学と暗号の電子工学分野を網羅しています。
D パスカグーラ・E モスポイント地区
パスカグーラ港には米国国防総省の主要な軍備契約企業のノースロップグラマン社の造船本部は、米国南東部全域ではもっとも大きい企業として、広く知られております。2006年にノースロップグラマン社は、RQ-4グローバルホーク無地偵察機やMQ-8Bファイヤースカウト無人機の組立とテストを行う無人機システムセンターをモスポイントにあるトレントロット空港の隣接用地に設立しました。また、この地域には、ロールスロイス社の船舶部門の鋳造本拠地と大規模なシェブロン精錬所もあります。
F ブルックリフィールド地区
以前は米国空軍基地であったブルックリフィールドは、アラバマ州モビール市の大きな輸送コンビナートの一角に位置しています。2007年には、北米エアバス社がブルックリフィールドをエンジニアリング工場の拠点として選びました。それから翌年の2月には特に期待されていた次世代空中給油機の落札発表が米国空軍からありました。米空軍は旧ボーイング社のKC-135ストラートタンカーに代わるノースロップグラマン社とエアバス社で組まれた共同事業の新KC-45タンカーに決定したとの発表によって波紋が広がりました。契約内容は、納期の10〜15年にわたり、落札額として最高400億ドルともいわれる179機の給油機を納品することに加え、4500人の航空関連雇用を地域に創出する見込みでした。しかし、後にボーイング社の政治的圧力で、この契約はキャンセルとなり、一からやり直すことになりました。2011年2月24日(木)には米空軍がボーイング社との空中給油タンカー契約を発表しています。